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菜根譚の処世術~職場、事業編~

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菜根譚の処世術

菜根譚(さいこんたん)・・・『菜根譚』という書名は、「人よく菜根を咬みえば、則ち百事なすべし」という語からきています。

著者は、洪自誠。詳細は不明ですが、明代の末期に隠遁して道を楽しんだ人物であろうといわれています。

菜根譚の思想は、仏教、道教、儒教からきているそうです。

菜根譚は前集に222条、後集に135条あります。

ここではその膨大な数の言葉の中から、処世術に関するものをとりあげています。

世渡り

世渡りをするには、先を争うときに人に一歩を譲る心がけを持つことが尊い。この自分から一歩を退くことが、とりもなおさず後に一歩を進める状態になる。
人を遇するには、厳しすぎないように、一分は寛大にする心がけを持つことがよい。この人のためにすることが、実は自分のためになる土台となる。

菜根譚前集一七

世渡りでは、必ずしも功名を立てなくともよい。大過なく過ごせれば、それがすなわち功名だ。また、人と交わるときは、わが恩恵に感謝することを求めてはならない。怨まれなかったなら、それがすなわち恩恵だ。

菜根譚前集二八

人のうわさ話

片一方だけを信用して、悪だくみする男にだまされてはならぬ。自信過剰になって、から元気にふりまわされてはならぬ。自分の長所を挙げることで、かえって他人の短所を表面に現わすようになってはならない。

菜根譚前集一二〇

人の悪事を聞いても、すぐ憎むというようなことをしてはならない。それは、ないことをあるように悪口ざんげんする者が、自分の怒りを晴らすためかも知れないから。また、人の善行を聞いても、急に親しむというようなことをしてはならない。それは悪がしこい者が、自分の立身出世のためかも知れないから。

菜根譚前集二〇五

仕事の行き詰まり

仕事に行きづまり形勢が全くきわまった者は、よろしくそれに志した初心に立ち返って考え直すべきである。(反対に)、すでに功名り名遂げた人は、ゆく末のことを見定めておくことが必要である。

菜根譚前集三〇

他人に対して

小人に対しては、(その欠点短所を責めて)、いくらでもきびしくすることはたやすいが、それによってその人まで怨みやすいので、その人を憎まないという点がむずかしい。(これに反して)、君子に対しては、(その美点長所を尊敬して)、へりくだって恭しくすることはたやすいが、過不及のないように礼を尽くすという点が
むずかしい。

菜根譚前集三六

部下に対して

部下の者の功労と過失とは、少しもないまいにしてはならない。もしも、あいまいにすれば、部下の者は怠け心を持つようになる。(これに反して)、個人的な恩義と遺恨とは、はっきりしすぎてはならない。もしも、はっきりしすぎると、部下の者は離れ背く心を起こすようになる。

菜根譚前集一三六

自分の立ち位置

処世の立場としては、常に世人よりも一歩だけ高いところに立っていないと、あたかも塵の中で衣を振い、泥の中で足を洗うようなことになる。これでは、どうして塵や泥にまみれている世間を超越することができようか。

菜根譚前集四三

共同で仕事をする相手

悟った人は、胸中に何の思い患うこともないし、愚かな人は、何も知らず何を考えることもない。この人達とは、ともに学問を論じ、また、協力して仕事をすることができる。ただ中途半端な知識人だけは、一通りの思慮知識がよけいにあり、それだけにあて推量し疑い深いものが多い。こういう人とは、何事につけても共同して仕事をすることは難しい。

菜根譚前集二一六

出世

爵禄や官位は登りつめない方がよい。あまり登りつめると、人にねたまれてその身が危ない。特別な才能は出しつくさない方がよい。あまり出しつくすと、長続きせず下り坂になる。

菜根譚前集一三七

引退

官位を去るには、全盛の時にするのがよく、身をおく地位は、人と争うことのないところがよい。

菜根譚前集一三七

事業

修行を志すなら、なん度も煉り鍛えた金のように、じっくりとするがよい。速成では深い修養はえられない。また、事業を行なうなら、強い石弓を発するように、慎重にするがよい。軽々しく発しては大きな成果はえられない。

菜根譚前集一八八

大事業を成し遂げる人というものは、多くは虚心で円滑な人である。(これに反して)、事業に失敗し機会を失うような人は、必ずかた意地で執念深い人である。

菜根譚前集一九四

処世の道としては、世俗の人と全く同じであってはよくないが、また、あまりかけ離れてしまってもよくない。事業をおこすには、人にいやな思いをさせるのはよくないが、また、人気どりの喜ばせるだけでもよくない。

菜根譚前集一九五

処世に当たっては、一歩ふみ出すところで、そこで一歩退く算段をしておけば、なんとか、向う見ずに進んだ雄羊が垣根に角を突っこんで進退きわまるような、災いを免れられるであろう。また、事業に当たっては、いざ着手するときに、まずその事業から手を引くときの工夫をしておけば、それでこそ騎虎の勢いでみすみす陥るような、危険を逃れられるであろう。

菜根譚後集二九

出典

『菜根譚』(岩波文庫)

参考

[決定版]菜根譚 PHP研究所

菜根譚 (講談社学術文庫)

別冊NHK100分de名著 菜根譚×呻吟語―成功から学ぶのか、失敗から学ぶのか (教養・文化シリーズ)

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